最近、ビレイアシスト機能付きのビレイデバイスが気になっているのでまとめ記事起こし。
Grigri+ グリグリ-プラス
ブレーキアシスト付きデバイスの代名詞ともいえるのはグリグリでしょう。一度使ったら手放せないものだと思います。最初のグリグリはソロクライミングにも用いられていましたが、グリグリ2からはそれはできなくなりましたね。
国内ではグリグリは外岩では用いるべきではないとの意見もありますが、海外ではそのようなことはありません。トップロープのみで使用するべきとか、それは偏見といえると個人的には思います。
さて、グリグリ2をバージョンアップさせた新作。グリグリ+ですが、主な変更点は以下のようです。
・対応ロープ経:8.9-10.5mm(推奨)
・トップロープモードと通常モードの変更とモードのロック
・ロープのロック解除レバーを最大限に引くとロープ繰り出しロックする
グリグリ+の最大の特徴といえばロワーダウン時にロープのロック解除レバーを引いた際、最大限に引くと逆にロープがロックする仕様でしょう。
実はこの機能はカンプが2014年に発表したMatik マティックに搭載されている(後述)ものですが、ペツルが強調しているのは初心者が誤ってロープを流し過ぎてしまうのを防止するためとしているのに対し、カンプはロワーダウンの途中でクライマーをストップすることが容易。ということでしょう。
そして、トップロープモードが搭載されたのは初めての試みですね。このモードにすることで、ロックが緩やかにされるそうです。モードロック機能もありますので、勝手に途中でモード切替してしまうミスはなさそう。
もう一点。ロープ経の対応が変わりました。グリグリ2では11mmまで対応でしたが10.5mmになりましたね。11mmまで対応とはいえ、10.5mmのロープでも劣化してきてロープが太くなってくると繰り出しにくかったのでその点を踏まえてなのかもしれません。
しかし、一応使用できるロープ経は8.5~11mmまでだそうですよ。
○Wild Country ワイルド・カントリー
REVO レボ
ワイルドカントリーがいよいよブレーキアシスト付きに参入してきました。WCのビレイデバイスは随分前にキャドを用いた動画が出されていて気になっていたのですが、想像していたものよりも小さかったのが第一印象です。
REVOはめちゃくちゃプロモーションがんばっているイメージです。
たくさん動画を観ました。たくさん動画を見たせいか、個人的にすごく欲しいです(笑)
ただ、対応ロープ経の記載がないのが残念なので発売する頃にはもっと情報が増えることでしょう。
グーグル検索で「ワイルドカントリー」と言葉をいれると REVO が続いて出てくるので注目度の高いデバイスだと思います。
REVOの特徴は以下の通りです。
・上下という決まりがないため、どちらもクライマー側/ビレイヤー側となる。
・すばやいロープの繰り出しではロックしないが、通常では起こらない速さでロープが繰り出される(クライマーの落下)と素早くロックする。
・内部の構造はプーリーのように回転するものになっている。
上下の決まりがない。
上下の決まりがないというのは、ロープをどちらから入れてもビレイデバイスとして機能する。ということ。通常のデバイスは、クライマー側、ビレイヤー側。とロープを入れる向きが決まっているので、それを間違えると事故につながる。ということです。
ビレイを教えてもらう際に最初に教わることですよね。でも、上下の決まりがないので、このミスがまずありえない。という点は事故の可能性を一つなくしているので素晴らしい点だと個人的には思います。
すばやいロープの繰り出し(クリップ動作)ではロックしない。
これは慣れもあるのではないかな?と思うのですが、見本市での説明ではそのように言っていました。確実にロックするよ!っていう話しと初心者でも使いやすいよ!っていうことを強調したかったのかもしれません。
内部構造はプーリーのようになっている。
REVOの革新的な点は上下の決まりがないということと、このプーリーのような構造ではないでしょうか。コンセプト動画では内部構造のキャドが出されていますが、回転する中でロックする場所が限られていますので、ロックするならロック機能が存在している1ヶ所の部分を刺激しなくてはなりません。
そのため、フォール時にもロープが多少流れると思われますが、それが緩やかなフォールを生み出すと考えればアリな発想だと、ポジティブに考えています。
The Revo from Wild Country on Vimeo.
つまり、ロックする仕様そのものが他のブレーキアシストデバイスとは異なる発想になります。
○Trango トランゴ
Vergo ヴァーゴ
シンチが有名なトランゴですが、グリグリに並んで人気のデバイスだと思います。ただ、グリグリよりも認知度が低いので、国内では人気はグリグリに及ばないでしょう。
とはいえ、ずいぶん前からブレーキアシスト付きデバイスを販売しています。
今回は、シンチよりも一回りコンパクトになったヴァーゴを出してきました。主な特徴は以下の通り。
・ロープの繰り出し時に素早くロックをしにくくして繰り出すことができる
・コンパクトで軽量
・手に収まりやすい構造
ヴァーゴはトランゴ独特の横向きにロープを出す形のデバイスです。通常、チューバー型にしろ多くのデバイスは立てにロープをを出すでしょう。しかし、トランゴは目の付け所が違います。横向き。
これによってどれほどメリットがあるかどうかわかりませんが、ヴァーゴは手に収まりやすい形状とコンパクトさを実現していますので、ビレイが楽なのかもしれません。
もし、その他のメリットを想像するならば、ビレイ時にロープの屈折角度が小さくなるため、スムーズに出やすい。というところでしょうか?(若干だと思いますが)
そして、ヴァーゴの最大の特徴は素早くロープを繰り出せる点です。簡単にロックしにくい状況を作り出すことができるために、素早くロープを繰り出せて、ロックしないのです。
クライマーは心理的にいち早くクリップしたいもの。どのタイミングでクリップするのかビレイヤーはいつも気を使っています。不意にロープを繰り出そうとした際にロープがロックしてしまっては、ビレイヤーもロック解除するために大変気を使います。素早いロープの繰り出し時にロックしてしまうのはブレーキアシスト付きデバイスの宿命ともいえる問題ですので、それを解消するために開発しているのでしょう。
ロワーダウン時にはグリグリと同様にロック解除レバーによって行うことができます。
○CAMP カンプ(カシン)
Matik マティク
カンプ(カシン)が随分以前に発売していたマティクですが、ISPOベストギア2016で紹介されていましたので、ここでも紹介。
マティクは2年くらい前から発売されていたので、知っている人も多いでしょう。ただ、グリグリ2の陰に隠れてあまり日の目を見ていませんが、個人的には素晴らしいギアだと思ってきていました。
マティクの特徴は以下の通り。
・ロープ経8.6-10.2mm
・大口なカラビナとの接続孔
・ロープをロックする時、鋭角に挟みこまないためロープを傷めにくい
・ロック解除レバーを最大限に引くとロックする
カラビナとの接続孔
動画ではロック解除~逆にロックする説明に重点をおいているため指を入れていますが、カラビナとの接続孔は大口設計で、管付きカラビナのスクリュー部分も楽々通します。そのため、万一ビレイ中にカラビナが回転してゲート部分でデバイスが止まっていたとしても、クライマーが落下時にはカラビナが回転して常に縦方向に荷重がかかるようになっています。
横方向への静荷重の耐性は縦方向に比べて極端に低く、カラビナが横方向時の負荷&破損は想像よりも簡単に起こってしまいます。そのリスクを減らすための大口設計に着目したのは大きいですね。
ロッキング部分が鋭角にならない
カタログには一般的なブレーキアシスト(絵はグリグリっぽい?)のデバイスは鋭角にロープを挟みこみロックすると述べられていますが、それと比較すればマティクはロープを面で挟んでロックすると記載があります。実際にグリグリ2を確認してみましたが、どうやって鋭角になるのかはわからなかったので、2014年頃にはそういったものがあったのでしょうかね?
ロック解除レバーを最大限に引くと逆にロープがロックする
グリグリ+に搭載されたシステムと同様ですね。マティクがさきがけですが、古いマティクの紹介動画にはロワーダウン時にクライマーが止めてほしいところで、容易に止められる。というような説明がされていましたが、2016年度版は安全性に配慮して・・・ということでグリグリ+と同様の機能だと説明しています(笑)
☆ちょっと変わったギア☆
EDELRID エーデルリッド
OHM オー・エイチ・エム
ロープ界の先駆者、エーデルリッドからまた先進的なギアを発表してきましたよ(笑)
「うちは先駆者だよー」的な自負があるのか、エーデルリッドは少し違った目線できますね。OHMは体重差のあるクライマー・ビレイヤーペアの人達に向けたアイテムです。
特に、女性ビレイヤーのためのアイテムといえるかもしれません。
OHMは1ピン目のヌンチャクのうち、ロープ側のカラビナに取り付けるものです。金属同士の接触はよくないんじゃないかなーと思ったりしますが、エーデルリッド様はそんなことには言及しません(笑)
登る前にOHMにロープを通しておきます。それを、1ピン目のヌンチャク(ロープ側のカラビナ)に装着しておきます。
これで、1ピン目はロープクリップはありません。マスタースタイルで1ピン目にかけましょう。
この時、クライマーがビレイヤーよりも重い場合にOHMは効果を発揮します。特に20~30%以上の体重差がある場合にはOHMが推奨されます。
OHMはフリクションを高めるための装置です。体重差のあるペア(クライマーがビレイヤーよりも20~30%以上重い)がクライミングをしている際、クライマーが落下時に自然とビレイヤーは1ピン目に向かって持ち上がります。
ビレイヤー自らがジャンプするダイナミックビレイとは異なり、体重差が激しいと自然とビレイヤーは引き寄せられてしまいます。この時、場合によってはクライマーとビレイヤーが接触してしまうほどクライマーが落下してくるかもしれません。これによって、ビレイヤーは骨折などの重大な事故につながる可能性があります。
OHMは体重差のあるペアの落下・引き寄せ距離を減らす効果があり、事故を防ぐことに貢献してくれます。体重の軽い方はオススメのギアになるでしょう。ただし、諸々の注意点があることにも気を付けてください。
注意点1.
OHMは登りながらロープを通すことができません。そのため、毎回取り外す必要があります。従って、複数人でセッションしているルートになると毎回1ピン目をマスタースタイルにしなくてはいけませんので嫌がられるかもしれません。
注意点2.
OHMにより落下距離の計算が異なってきます。制動装置になりますので、落下距離が少なくなります。従ってダイナミックビレイを要するシーンで思ったほどできないかもしれません。使い方には慣れが必要ですね。
Bulletproof バレットプルーフ
どうしてこういう発想がなかったのでしょう?と真っ先に思いましたが、コストと生産性のことを考えれば納得します。
僕も気になっていたのですが、ハンガー側のカラビナはハンガーでゴリゴリしまくってボロボロになってしまいます。また、ロープ側のカラビナはロープが高速で擦れることでアルミが少しずつ溶けてロープの形に消耗してしまいます。残置ビナであれば尚更ですね。
そういったことに着目したのがこのカラビナです。
ほとんどのカラビナはクリップのしやすさを追求するのですが、エーデルリッドは少し違います。カラビナの摩耗に着目したのがコレ。
異なる金属を張り合わせると「異種金属接触腐食」を起こしてしまいますが、それを実現させてしまいました。スチール部分にしたにも関わらず55gの軽量化を実現。ということです。
どれほど必要性を感じるかわかりませんが、日本での発売は価格がネックですね!
あと、動画に出てる人は寝癖が気になりますね(笑)
-まとめ-
先日、アシマちゃんがジムでグランドフォールする事故がありましたね。その時、実父がグリグリを用いてビレイしていたそうですが、ロワーダウン時のミスで勢いよく地面にたたきつけられてしまいました。
詳しくは情報がありませんが、グリグリを用いていて、ロワーダウンのロープを早く繰り出していた際、何らかの原因でパニックになってしまいレバーを戻してロックしなかったのではと推測されています。
実際、この問題は初心者にも当てはまり、グリグリ+の今回の改善に貢献したものと思います。
マルチピッチでは重さの関係から、ブレーキアシストデバイスは用いられにくいですが、スポートクライミングではブレーキアシストが一般化傾向にあるように思わせる最近の発表でした。
一般的にビレイ初心者はチューバー型を用いる方がよいとされてきていますが、スポートのみであればその概念も変わりつつあるように思わせます。個人的には車の免許と同じような推移に思えて仕方がありませんがどうでしょうか。今では約9割がオートマチックカ―と言われている昨今。ブレーキアシストの時代がきても何ら不思議ではないでしょう。
構造が複雑化するほどに危険性が高まる。と考えている方もいるかもしれません。ブレーキアシストタイプの破損による怪我の報告はあまり聞くことがありませんので、一考の余地があるかもしれませんね。
今回発表されたものの中で、個人的に注目はWCのREVOでしょう。「ブレーキアシストならグリグリ」っていう人も少なくないと思います。
ブレーキアシストの最大のデメリットは「重さ」にありますから、デバイス個々の重さは購買を左右する重要なファクターではないでしょうか。金額は高いとはいえ、そんなものだと思えば気にならないでしょう。
期待値としてはREVO。
定番のグリグリ+。
マルチピッチの可能性ならヴァーゴ。
という感じかな?と思います。
最後に、各社安全性を高めようとする風潮は好感がもてますので、その中で選んでいきたいですね。
※追記
17日に新作ビレイデバイスを紹介した動画がアップされていました。
先月から気になっていたBlack Diamondのビレイデバイスが出ていたので追記して紹介。
BDのビレイデバイスはマムートから出されているスマートとほぼ同じ構造ですね。
動画の中で、背景にビレイデバイスが色々な形をたどって完成しているのがなんとなくわかりますね!
BDの特徴としては・・・
・シングルロープにのみ対応
・軽量
・ロック解除が容易
というところでしょうか。
動画の中で、「HMSビナを使うことが推奨されます。」と述べていますがいまどきは当然ですかね。
このタイプはチューバー型の延長線上にあるデバイスですので、扱いやすいですね。ロープの繰り出しもコツをすぐに得るでしょう。
BDファンは必見。あとはデザインの好みかな。
○メガジュルスポーツ
エーデルリッドが以前から発売していた、メガジュルにスポーツが登場しました。
見た目上、特に変更された点があまりないですが・・・こちらもスマートや今回のBDのデバイスと似たような構造でロープをロックします。
ただ、かなりの肉抜きをしてあるので、最も軽量なブレーキアシストデバイスとなるでしょう。
ダブルロープ対応なので、マルチなどでも大活躍です。
動画内で紹介されているように、セカンドクライマーを引き上げたり、ラッペルをするのにも役立ちますね。
○グリグリ+
動画内のグリグリ+は上記で説明した内容がほとんどなので特別説明しなくてもいいでしょう。
○REVO
レボはロープのロック解除が動画内でみれますね。こんな風にロックしてるんかー。ロック解除はそうやるのかー的なことで感心しました。
BDのデバイスの動画が出てから書こうと思っていたが、待てど暮らせど紹介されないので一足先に紹介されているものをみてみましょ!
気になるビレイデバイス
○Petzl ペツル
Grigri+ グリグリ-プラス
ブレーキアシスト付きデバイスの代名詞ともいえるのはグリグリでしょう。一度使ったら手放せないものだと思います。最初のグリグリはソロクライミングにも用いられていましたが、グリグリ2からはそれはできなくなりましたね。
国内ではグリグリは外岩では用いるべきではないとの意見もありますが、海外ではそのようなことはありません。トップロープのみで使用するべきとか、それは偏見といえると個人的には思います。
さて、グリグリ2をバージョンアップさせた新作。グリグリ+ですが、主な変更点は以下のようです。
・対応ロープ経:8.9-10.5mm(推奨)
・トップロープモードと通常モードの変更とモードのロック
・ロープのロック解除レバーを最大限に引くとロープ繰り出しロックする
グリグリ+の最大の特徴といえばロワーダウン時にロープのロック解除レバーを引いた際、最大限に引くと逆にロープがロックする仕様でしょう。
実はこの機能はカンプが2014年に発表したMatik マティックに搭載されている(後述)ものですが、ペツルが強調しているのは初心者が誤ってロープを流し過ぎてしまうのを防止するためとしているのに対し、カンプはロワーダウンの途中でクライマーをストップすることが容易。ということでしょう。
そして、トップロープモードが搭載されたのは初めての試みですね。このモードにすることで、ロックが緩やかにされるそうです。モードロック機能もありますので、勝手に途中でモード切替してしまうミスはなさそう。
もう一点。ロープ経の対応が変わりました。グリグリ2では11mmまで対応でしたが10.5mmになりましたね。11mmまで対応とはいえ、10.5mmのロープでも劣化してきてロープが太くなってくると繰り出しにくかったのでその点を踏まえてなのかもしれません。
しかし、一応使用できるロープ経は8.5~11mmまでだそうですよ。
○Wild Country ワイルド・カントリー
REVO レボ
ワイルドカントリーがいよいよブレーキアシスト付きに参入してきました。WCのビレイデバイスは随分前にキャドを用いた動画が出されていて気になっていたのですが、想像していたものよりも小さかったのが第一印象です。
REVOはめちゃくちゃプロモーションがんばっているイメージです。
たくさん動画を観ました。たくさん動画を見たせいか、個人的にすごく欲しいです(笑)
ただ、対応ロープ経の記載がないのが残念なので発売する頃にはもっと情報が増えることでしょう。
グーグル検索で「ワイルドカントリー」と言葉をいれると REVO が続いて出てくるので注目度の高いデバイスだと思います。
REVOの特徴は以下の通りです。
・上下という決まりがないため、どちらもクライマー側/ビレイヤー側となる。
・すばやいロープの繰り出しではロックしないが、通常では起こらない速さでロープが繰り出される(クライマーの落下)と素早くロックする。
・内部の構造はプーリーのように回転するものになっている。
上下の決まりがない。
上下の決まりがないというのは、ロープをどちらから入れてもビレイデバイスとして機能する。ということ。通常のデバイスは、クライマー側、ビレイヤー側。とロープを入れる向きが決まっているので、それを間違えると事故につながる。ということです。
ビレイを教えてもらう際に最初に教わることですよね。でも、上下の決まりがないので、このミスがまずありえない。という点は事故の可能性を一つなくしているので素晴らしい点だと個人的には思います。
すばやいロープの繰り出し(クリップ動作)ではロックしない。
これは慣れもあるのではないかな?と思うのですが、見本市での説明ではそのように言っていました。確実にロックするよ!っていう話しと初心者でも使いやすいよ!っていうことを強調したかったのかもしれません。
内部構造はプーリーのようになっている。
REVOの革新的な点は上下の決まりがないということと、このプーリーのような構造ではないでしょうか。コンセプト動画では内部構造のキャドが出されていますが、回転する中でロックする場所が限られていますので、ロックするならロック機能が存在している1ヶ所の部分を刺激しなくてはなりません。
そのため、フォール時にもロープが多少流れると思われますが、それが緩やかなフォールを生み出すと考えればアリな発想だと、ポジティブに考えています。
The Revo from Wild Country on Vimeo.
つまり、ロックする仕様そのものが他のブレーキアシストデバイスとは異なる発想になります。
○Trango トランゴ
Vergo ヴァーゴ
シンチが有名なトランゴですが、グリグリに並んで人気のデバイスだと思います。ただ、グリグリよりも認知度が低いので、国内では人気はグリグリに及ばないでしょう。
とはいえ、ずいぶん前からブレーキアシスト付きデバイスを販売しています。
今回は、シンチよりも一回りコンパクトになったヴァーゴを出してきました。主な特徴は以下の通り。
・ロープの繰り出し時に素早くロックをしにくくして繰り出すことができる
・コンパクトで軽量
・手に収まりやすい構造
ヴァーゴはトランゴ独特の横向きにロープを出す形のデバイスです。通常、チューバー型にしろ多くのデバイスは立てにロープをを出すでしょう。しかし、トランゴは目の付け所が違います。横向き。
これによってどれほどメリットがあるかどうかわかりませんが、ヴァーゴは手に収まりやすい形状とコンパクトさを実現していますので、ビレイが楽なのかもしれません。
もし、その他のメリットを想像するならば、ビレイ時にロープの屈折角度が小さくなるため、スムーズに出やすい。というところでしょうか?(若干だと思いますが)
そして、ヴァーゴの最大の特徴は素早くロープを繰り出せる点です。簡単にロックしにくい状況を作り出すことができるために、素早くロープを繰り出せて、ロックしないのです。
クライマーは心理的にいち早くクリップしたいもの。どのタイミングでクリップするのかビレイヤーはいつも気を使っています。不意にロープを繰り出そうとした際にロープがロックしてしまっては、ビレイヤーもロック解除するために大変気を使います。素早いロープの繰り出し時にロックしてしまうのはブレーキアシスト付きデバイスの宿命ともいえる問題ですので、それを解消するために開発しているのでしょう。
ロワーダウン時にはグリグリと同様にロック解除レバーによって行うことができます。
○CAMP カンプ(カシン)
Matik マティク
カンプ(カシン)が随分以前に発売していたマティクですが、ISPOベストギア2016で紹介されていましたので、ここでも紹介。
マティクは2年くらい前から発売されていたので、知っている人も多いでしょう。ただ、グリグリ2の陰に隠れてあまり日の目を見ていませんが、個人的には素晴らしいギアだと思ってきていました。
マティクの特徴は以下の通り。
・ロープ経8.6-10.2mm
・大口なカラビナとの接続孔
・ロープをロックする時、鋭角に挟みこまないためロープを傷めにくい
・ロック解除レバーを最大限に引くとロックする
カラビナとの接続孔
動画ではロック解除~逆にロックする説明に重点をおいているため指を入れていますが、カラビナとの接続孔は大口設計で、管付きカラビナのスクリュー部分も楽々通します。そのため、万一ビレイ中にカラビナが回転してゲート部分でデバイスが止まっていたとしても、クライマーが落下時にはカラビナが回転して常に縦方向に荷重がかかるようになっています。
横方向への静荷重の耐性は縦方向に比べて極端に低く、カラビナが横方向時の負荷&破損は想像よりも簡単に起こってしまいます。そのリスクを減らすための大口設計に着目したのは大きいですね。
ロッキング部分が鋭角にならない
カタログには一般的なブレーキアシスト(絵はグリグリっぽい?)のデバイスは鋭角にロープを挟みこみロックすると述べられていますが、それと比較すればマティクはロープを面で挟んでロックすると記載があります。実際にグリグリ2を確認してみましたが、どうやって鋭角になるのかはわからなかったので、2014年頃にはそういったものがあったのでしょうかね?
ロック解除レバーを最大限に引くと逆にロープがロックする
グリグリ+に搭載されたシステムと同様ですね。マティクがさきがけですが、古いマティクの紹介動画にはロワーダウン時にクライマーが止めてほしいところで、容易に止められる。というような説明がされていましたが、2016年度版は安全性に配慮して・・・ということでグリグリ+と同様の機能だと説明しています(笑)
☆ちょっと変わったギア☆
EDELRID エーデルリッド
OHM オー・エイチ・エム
ロープ界の先駆者、エーデルリッドからまた先進的なギアを発表してきましたよ(笑)
「うちは先駆者だよー」的な自負があるのか、エーデルリッドは少し違った目線できますね。OHMは体重差のあるクライマー・ビレイヤーペアの人達に向けたアイテムです。
特に、女性ビレイヤーのためのアイテムといえるかもしれません。
OHMは1ピン目のヌンチャクのうち、ロープ側のカラビナに取り付けるものです。金属同士の接触はよくないんじゃないかなーと思ったりしますが、エーデルリッド様はそんなことには言及しません(笑)
登る前にOHMにロープを通しておきます。それを、1ピン目のヌンチャク(ロープ側のカラビナ)に装着しておきます。
これで、1ピン目はロープクリップはありません。マスタースタイルで1ピン目にかけましょう。
この時、クライマーがビレイヤーよりも重い場合にOHMは効果を発揮します。特に20~30%以上の体重差がある場合にはOHMが推奨されます。
OHMはフリクションを高めるための装置です。体重差のあるペア(クライマーがビレイヤーよりも20~30%以上重い)がクライミングをしている際、クライマーが落下時に自然とビレイヤーは1ピン目に向かって持ち上がります。
ビレイヤー自らがジャンプするダイナミックビレイとは異なり、体重差が激しいと自然とビレイヤーは引き寄せられてしまいます。この時、場合によってはクライマーとビレイヤーが接触してしまうほどクライマーが落下してくるかもしれません。これによって、ビレイヤーは骨折などの重大な事故につながる可能性があります。
OHMは体重差のあるペアの落下・引き寄せ距離を減らす効果があり、事故を防ぐことに貢献してくれます。体重の軽い方はオススメのギアになるでしょう。ただし、諸々の注意点があることにも気を付けてください。
注意点1.
OHMは登りながらロープを通すことができません。そのため、毎回取り外す必要があります。従って、複数人でセッションしているルートになると毎回1ピン目をマスタースタイルにしなくてはいけませんので嫌がられるかもしれません。
注意点2.
OHMにより落下距離の計算が異なってきます。制動装置になりますので、落下距離が少なくなります。従ってダイナミックビレイを要するシーンで思ったほどできないかもしれません。使い方には慣れが必要ですね。
Bulletproof バレットプルーフ
どうしてこういう発想がなかったのでしょう?と真っ先に思いましたが、コストと生産性のことを考えれば納得します。
僕も気になっていたのですが、ハンガー側のカラビナはハンガーでゴリゴリしまくってボロボロになってしまいます。また、ロープ側のカラビナはロープが高速で擦れることでアルミが少しずつ溶けてロープの形に消耗してしまいます。残置ビナであれば尚更ですね。
そういったことに着目したのがこのカラビナです。
ほとんどのカラビナはクリップのしやすさを追求するのですが、エーデルリッドは少し違います。カラビナの摩耗に着目したのがコレ。
異なる金属を張り合わせると「異種金属接触腐食」を起こしてしまいますが、それを実現させてしまいました。スチール部分にしたにも関わらず55gの軽量化を実現。ということです。
どれほど必要性を感じるかわかりませんが、日本での発売は価格がネックですね!
あと、動画に出てる人は寝癖が気になりますね(笑)
※
-まとめ-
先日、アシマちゃんがジムでグランドフォールする事故がありましたね。その時、実父がグリグリを用いてビレイしていたそうですが、ロワーダウン時のミスで勢いよく地面にたたきつけられてしまいました。
詳しくは情報がありませんが、グリグリを用いていて、ロワーダウンのロープを早く繰り出していた際、何らかの原因でパニックになってしまいレバーを戻してロックしなかったのではと推測されています。
実際、この問題は初心者にも当てはまり、グリグリ+の今回の改善に貢献したものと思います。
マルチピッチでは重さの関係から、ブレーキアシストデバイスは用いられにくいですが、スポートクライミングではブレーキアシストが一般化傾向にあるように思わせる最近の発表でした。
一般的にビレイ初心者はチューバー型を用いる方がよいとされてきていますが、スポートのみであればその概念も変わりつつあるように思わせます。個人的には車の免許と同じような推移に思えて仕方がありませんがどうでしょうか。今では約9割がオートマチックカ―と言われている昨今。ブレーキアシストの時代がきても何ら不思議ではないでしょう。
構造が複雑化するほどに危険性が高まる。と考えている方もいるかもしれません。ブレーキアシストタイプの破損による怪我の報告はあまり聞くことがありませんので、一考の余地があるかもしれませんね。
今回発表されたものの中で、個人的に注目はWCのREVOでしょう。「ブレーキアシストならグリグリ」っていう人も少なくないと思います。
ブレーキアシストの最大のデメリットは「重さ」にありますから、デバイス個々の重さは購買を左右する重要なファクターではないでしょうか。金額は高いとはいえ、そんなものだと思えば気にならないでしょう。
期待値としてはREVO。
定番のグリグリ+。
マルチピッチの可能性ならヴァーゴ。
という感じかな?と思います。
最後に、各社安全性を高めようとする風潮は好感がもてますので、その中で選んでいきたいですね。
※追記
17日に新作ビレイデバイスを紹介した動画がアップされていました。
先月から気になっていたBlack Diamondのビレイデバイスが出ていたので追記して紹介。
BDのビレイデバイスはマムートから出されているスマートとほぼ同じ構造ですね。
動画の中で、背景にビレイデバイスが色々な形をたどって完成しているのがなんとなくわかりますね!
BDの特徴としては・・・
・シングルロープにのみ対応
・軽量
・ロック解除が容易
というところでしょうか。
動画の中で、「HMSビナを使うことが推奨されます。」と述べていますがいまどきは当然ですかね。
このタイプはチューバー型の延長線上にあるデバイスですので、扱いやすいですね。ロープの繰り出しもコツをすぐに得るでしょう。
BDファンは必見。あとはデザインの好みかな。
○メガジュルスポーツ
エーデルリッドが以前から発売していた、メガジュルにスポーツが登場しました。
見た目上、特に変更された点があまりないですが・・・こちらもスマートや今回のBDのデバイスと似たような構造でロープをロックします。
ただ、かなりの肉抜きをしてあるので、最も軽量なブレーキアシストデバイスとなるでしょう。
ダブルロープ対応なので、マルチなどでも大活躍です。
動画内で紹介されているように、セカンドクライマーを引き上げたり、ラッペルをするのにも役立ちますね。
○グリグリ+
動画内のグリグリ+は上記で説明した内容がほとんどなので特別説明しなくてもいいでしょう。
○REVO
レボはロープのロック解除が動画内でみれますね。こんな風にロックしてるんかー。ロック解除はそうやるのかー的なことで感心しました。
レボが一番気になります。ソロシステムにもつかえそうですね。
返信削除ちょうど今しがたレボの記事をアップしました(さほど気になる話ではなくて雑談程度ですが)
削除レボは購入予定なので、早く試したいですね。
このコメントは投稿者によって削除されました。
返信削除グリグリとレボによるソロクライミングの比較をして欲しいです。
返信削除Revoが発売されて気になりますね!
削除グリグリは2以降でもソロクライミングで用いられていますか?私見では、初期のグリグリに穴を開けてデバイスを半固定みたいな形にして用いていたと思いますが…グリグリ2が発売された際に「ソロクライミングとして使うのはそれ以前とは違う工夫が必要」という話を見聞きしていたので、以降のバージョンでは難しいかな?と思っていました( ^ω^ )