気になったこと:最近、9.5mm以下のシングルロープ(ダイナミック)が国内販売されている件



この前、ネットサーフィンをしていたら、ベアールの9.1mmロープ(ユニコア)が国内販売されていたのに気が付いた。

時を同じくして、友人もFBで同ロープを購入していたのでてっきり「個人輸入したのかな?」と思っていたのだが、国内販売されていたことに驚いた。

というのも、僕の認識では9.5mm(だったかな?)以下のロープ経のものは法律上国内販売できなかったはず。と思っていたからだ。


とても気になったので、少し調べてみることにした。


ダイナミックロープの基準って?

ロープの基準っていえばUIAA(国際山岳連盟)の強度に関する基準。

以前聞いた話では、マムートとUIAAが始めたとされるロープの強度に関する基準。これによりマムートのロープに対する信用のブランド化に成功した?

ロープの老舗。エーデルリッドとベアールは「そんな基準とっくにクリアした製品だしてますけど。なにか?」的な話があったのか?
※いいかげんなネタ話です。

UIAA基準をクリアしている製品が世の中出回っているわけですが、その中でも日本でロープを販売するには国内基準があるということです。

国内の登山ロープ販売基準

昨日、友人がいいサイトを紹介してくれたのでここにも紹介 こちら

記事内には東さんのロープに関する詳細を転載されています。

東さんの記事によると・・・

消費生活用製品安全法によって国内販売できるロープの安全基準が定められています。
この法律の基準をクリアした製品にはPSCマークと販売許可が付与されるみたいですね。

僕が認識していた9.6mmっていうロープ経の基準については一切書いてないので、間違った情報を認識していた可能性が高くなってきた。

最近のPSC基準:ソース
 すれ、傷その他の欠点がなく仕上げが良好であること。

 落下衝撃試験を行つたとき、初回にはロープの衝撃応力が、技術上の基準の欄の4(2)の表示のあるものにあつては7,845.3ニュートン以下、その他のものにあつては11,768.3ニュートン以下であり、2回目にはロープが切断しないこと。

 せん断衝撃試験を3回行つたとき、ロープのせん断衝撃力が、4(2)の表示があるものにあつてはいずれも980.7ニュートン以上、その他のものにあつてはいずれも1,471.0ニュートン以上であること。


(1) 届出事業者の氏名又は名称が容易に消えない方法により表示されていること。ただし、届出事業者の氏名又は名称は、経済産業大臣の承認を受けた略称若しくは記号又は経済産業大臣に届け出た登録商標をもつて代えることができる。
 (2) 二つ折り又は2本で使用するものにあつては、1/2の記号が容易に消えない方法により表示されていること。
 (3) 登山用ロープを安全に使用する上で必要となる使用上の注意事項が容易に消えない方法により適切に表示されていること。


よくわからない。っていうことでアルテリアから分かりやすくしたものが出てました。こちら

ダイナミックロープに関するヨーロッパ規格

ロープに関する規格(日本含む)

消費生活用製品安全法と海外の基準

ネットで調べるとけっこうあちらこちらに書いている人がいるのですが、改めて記載。
最初の東さんが記載していた「1955年に北アルプスで起きたナイロンザイル切断事件で、ナイロンロープの岩角での切断弱さが問題になり、1975年に消費生活用製品安全法の中で登山用ロープはその認可対象になりました。」というのはwikipediaにも記載がありました(wikiが正しいかは不明だが、詳細がかなり載っている)こちら 
2014年に発表されている当時のロープに関する考察も興味深い こちら

wikiの内容を一部要約してみると・・・

1955年1月2日。前穂高東壁にて50cm滑落した際にロープが破断し、滑落死したことが発端のようです。当時はドイツ製のナイロンロープ8mm。

当時のロープは引っ張り応力に対する耐久テストは行われていたということですが、せん断応力に対する耐久テストは行われていなかったのでは?という問題が進展したみたいですね。

消費生活用品安全法内のせん断テストはステンレス鋼の面取りをしていないものを使用してテストということになります。

UIAAでは引っ張り応力が中心?という情報がありましたが、各社せん断テストは行われているということでした。

海外のせん断テストには面取りをした金属を使用している。という情報記載もあったので、想像の域を出ませんが(確認とれば別)国内のテストよりも緩い可能性があります。

マムート社によると、せん断力に対する強さはロープの太さよりも編み方による影響が強いということだそうです。

東さんが記載していたSG基準についても調べておきました。

SG基準:こちら


SG基準は法律による定めではないことに注意ですね。クリアしていなくても販売できるよってことですね。

世界最細ダイナミックシングルロープ

2014年のISPOアワードを受賞したエーデルリッドの8.6mmロープに注目があったのを覚えています。

edelrid corble 8.6mm
※本家のサイトでは載っていませんね。

ロープが細くなると本当に大丈夫かな・・・と不安になるのですが、国内販売はされませんね。

上記の流れからすれば、基準テストを実施しないのかクリアしないのかわかりませんが。


まとめ

当初のロープ経と国内販売についての疑問を解決する情報には至りませんでしたが、今回調べたことから次のようにまとめてみます。

○国内のロープ販売基準は依然変更されていない(東さんの情報とは異なる点があるが、少なくとも2007年以降の変更はされていない)

○国内販売では依然としてPSC基準をクリアしないと販売できない

以前は国内販売できなかった(個人輸入による使用は可能だった)ロープの細さが販売されるようになった背景には、基準テストを実施した or クリアしたことによって販売が可能になった可能性。

国内テストの方が厳しい環境にある可能性も否定できません。

また、せん断応力に対する強度はロープの太さよりも編み方・コーティングに由来する部分もあるということでその辺りにも注意を払いたいところ。


少し話は違いますが、最近論文の書き方に関する本を読んでいて興味深い話が載っていました。

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西洋的な化学のアプローチは

○神が秩序ある原理を造られたが、人間には認識できていない原理がある。
○推定される原理の仮説を立てる
○仮説が正しいかどうかを確かめるためのデータを収集する
○古典的にはデータ”仮説”検定で統計処理をする
○仮説が「正しい」か「正しくない」のどちらかの結論を出す
○言葉で表現する

という流れが伝統的だそうです。
一方日本の科学というのは・・・

○「自然界で何が起こっているか」あるいは「薬の投与などの処置を加えた時にどのような反応が起こるか」などの現象を客観的に、かつ正確に、すなわち科学的に観察するのがよい

ということが根本にあるそうです。つまり・・・

西洋的な科学は「仮説」のもとに「検証」がある
日本的な科学は「結果」のもとに「検証」がある

という違いがあるわけですね。現象に対する実験に対し、仮説を立証するために実験する。
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日本と海外の検証の流れの違いがあるということは、ロープ技術の発展や見落としなどについても異なってくることに留意したいですね。世の中に出されているロープは安全、UIAA規格安全と鵜呑みにしないようにしたいなと改めて思いました。

自分のクライミングスタイルやエリア、ビレイヤーの技術等々様々な事柄にも注意を払っていきたいです。

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